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2010年04月

第4回-わがジンセイの名作映画・その2

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前回のつづき。初公開の「マイ・オールタイム・ベスト」の第二回は第4位からスタート。念のため、1~20位をもう一回記しておこう。

1.青べか物語
2.フィツカラルド
3.丹下左膳余話・百萬両の壺
4.独立愚連隊・西へ
5.若者のすべて
6.道
7.天狗飛脚
8.天国と地獄
9.秋立ちぬ
10.乱れる
11.東京物語
12.用心棒
13.幕末太陽傳
14.極楽剣法(前後編)
15.アメリカン・ウェイ
16.ペパーミントキャンディ
17.しとやかな獣
18.洲崎パラダイス・赤信号
19.豚と軍艦
20.カイロの紫のバラ

戦争コメディ映画というジャンルがある。最も有名なのは多分『M★A★S★H』('70年・米)だろう。泥沼化するベトナム戦争の真っ最中に、あえて朝鮮戦争を舞台として"Goddem, Army"というセリフで終わるドタバタコメディをヒットさせた、ロバート・アルトマン監督の天才さたるや!
実はこのジャンルなかなかに古く、1918年のチャップリン主演作品『担え銃』あたりが嚆矢か。チャップリンはその後、「大衆に人気のある外見」を理由に、アドルフ・ヒットラーが自分を真似たことにショックを受け、そのヒットラーを逆に真似た(この発想が凄い)『独裁者』('40年)という歴史的傑作も残している。
第二次大戦後はピンクの潜水艦で知られる『ペティコート作戦』('59年・米)や、可笑しくも哀しい『ミスタア・ロバーツ』('55年・米)など。もしかしたら、15位に挙げた「ベトナム戦争から一回も着陸していない(!)空飛ぶ海賊ロックテレビ局」をモチーフとした、怪優デニス・ホッパー主演の『アメリカン・ウェイ』('86年・英)も一種の戦争コメディかもしれない。

そして本邦に目を転じると、これがそこそこに秀作がある。我が川島雄三も初のカラー作品『グラマ島の誘惑』('59年・東京映画)に皇室問題、従軍慰安婦、沖縄問題に核兵器まで詰め込んで大奮闘。春風亭柳昇の体験を元にシリーズ化された『与太郎戦記』も良かった。「特技:落語」を「特技:露語」と誤読されて、陸軍中野学校でスパイ教育…は2作目だったか。軍隊を自衛隊に変え徹底的なドタバタ映画の題材とした、前田陽一監督の怪作『喜劇・右むけェ左!』('70年・東宝)もこのジャンルに入れて良いだろう。

さて、洋邦入り乱れて異色作の並ぶこのジャンルで、究極の1本といえば、岡本喜八監督の『独立愚連隊・西へ』('60・東宝)にトドメを刺す。この映画が語っているのはただひとつ。戦争というものがいかに愚かかということだ。
中国北支戦線で全滅、戦死と公報された左文字小隊が、全員ひょっこりと生還。メンツを重んじる帝国陸軍は彼らを公式には認めず、独立した遊軍部隊として扱う。そして与えられた任務は「旗手と共に敵軍に奪われた軍旗の奪還」。中央が焼け落ち、輪のようになったたったひとつのボロボロの軍旗のために、膨大な数の軍人と市民、男と女が戦い、泣き、笑い、そして死んで行く。これも全て、帝国陸軍のメンツのためであった。

左文字小隊を率いる鳥取農学校出身の田舎少尉を演じているのが、若き日の加山雄三というのが面白い! 『独立愚連隊・西へ』の公開は'60年10月、若大将シリーズの第一作『大学の若大将』は'61年7月公開なので、若大将になる直前の加山雄三が観られる貴重な作品でもある(ちなみにこれがデビュー第二作目)。
もっとも加山雄三の芝居はバリエーションがないというか、なんというか。「何をやっても若大将」「生まれついての若大将」という感じで、この作品でも若大将風。さしずめ「北支戦線の若大将」といったところか。しかしこの加山雄三のカラっとした芝居と、相棒・戸山軍曹を演じる佐藤允の快演が、この映画の雰囲気を、いや、圧倒的な成功を決定づけている。

物語として最も興味深いのは、味方のはずの日本軍にもメンツや名誉に目の眩んだ敵以上の悪人がおり、敵方にも男ながら惚れてしまうような好漢がいる、ということだろう。もちろん味方にも好漢がおり、当然敵にもしたたかな悪漢がいる。そして観客は敵や味方、国や民族ではない「何か」を観る、考えることになる。それがこの映画の最大の特徴かもしれない(詳しいストーリーは観てのお楽しみということで)。

それにしても凄い映画だ。コメディ映画でもあり、戦争アクションでもある。しかし、そんな笑いや緊張と同時に、中国娘、衛生兵、看護婦の残酷過ぎる物語も綴られる。この映画1本に、他の戦争映画数本分の展開が凝縮されていると言っても良い。そして岡本監督の十八番、西部劇調のムードも感じられる。コミカルさとドライさ、そして痛ましいまでの戦争の描写。これぞ岡本喜八の真骨頂だろう。

岡本監督は陸軍予備士官学校で終戦を迎え、特攻隊員の心情を『肉弾』('68年・ATG)や、『英霊たちの応援歌・最後の早慶戦』('79年・東宝)などで描き続けていた。同様のモチーフは近年も数々映画化されているが、「何かが違う」という声も少なくない。そして「あの世界が描けたのは、2005年に逝去した岡本喜八が最後だった」とも。

あ、いや、新藤兼人がまだ生きていたか。先週で満98歳。『陸に上った軍艦』('07年)があったな。あとは私と3歳しか違わない漫画家のこうの史代も凄い。『この世界の片隅に』映画化の話はないのだろうか。

すいません。たった1本でこの長さになってしまった。このジャンル、個人的にツボ過ぎて…。
5位以降はこれから思いつくままに書きます。

≪今回のお楽しみリンク≫

◇お待ちかね!『独立愚連隊・西へ』劇場予告編!主題歌作詩も岡本監督。
http://www.youtube.com/watch?v=g9QlxKKpMbQ
◇これも名作。『ミスタア・ロバーツ』予告編。
http://www.youtube.com/watch?v=k40dqgxtZ9g
◇『M★A★S★H』予告編。1970年カンヌ映画祭パルムドール。音楽も秀逸!
http://www.youtube.com/watch?v=4UeYGS0UU6E
◇コメディではないがコメディに見える?『陸に上った軍艦』予告編。
http://oka-gun.com/preview/letter_l.wmv

第3回-わがジンセイの名作映画・その1

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フェデリコ・フェリーニとニーノ・ロータについての原稿を書くため、YouTubeで『道』('54)のダイジェストを観た。関連リンクで『若者のすべて』('60)を発見。そして家に帰ると、成瀬巳喜男の『秋立ちぬ』('60)が録画されていた。わずか半日ほどの間に、私の生涯のベストと言える名作映画に触れ、感慨ひとしお。
映画についてはかなりの量の文章を書いたけれど、改めて考えてみると、いつもあるテーマに則って、系統的に映画紹介を行って来たため、全くランダムに、ただ「私が好きな映画」という括りで語ったことはなかった。せっかくブログを始めたのだから、今日はそれを書いてみよう。初公開の「マイ・オールタイム・ベスト」だ。洋邦新旧入り乱れて、無理矢理にベストテンをつけると以下の通りになる。

1.青べか物語
2.フィツカラルド
3.丹下左膳余話・百萬両の壺
4.独立愚連隊・西へ
5.若者のすべて
6.道
7.天狗飛脚
8.天国と地獄
9.秋立ちぬ
10.乱れる
11.東京物語
12.用心棒
13.幕末太陽傳
14.極楽剣法(前後編)
15.アメリカン・ウェイ
16.ペパーミントキャンディ
17.しとやかな獣
18.洲崎パラダイス・赤信号
19.豚と軍艦
20.カイロの紫のバラ

年間100本ペースという時期もあり、たぶん通算で千数百本観ていると思うが(数えたことがない)、その中のベスト20が上記である。日本、ドイツ、イタリア、イギリス、韓国、アメリカ。チャンバラもあれば悲恋モノ、コメディ、サスペンスもある。見事なくらいに目茶苦茶だな(苦笑)。
ベスト3、いや、ベスト4、いやベスト5は「同率首位」と言ってもいい。甲乙付けがたい名作で、たぶん私はこれらの記憶を携えて、墓に入って行くのだろう。

13位に挙げた『幕末太陽傳』('57年・日活)ばかりが話題になる川島雄三監督だが、川島の真の最高傑作は『青べか物語』('63年・東京映画)だと考えている。川島は現存する50作品をすべてスクリーンで観ているが、その上での、私なりの結論だ。オープニングの空撮から身震いがした。そして池野成の荘厳すぎるジャズ交響楽! すべてが特別なのだ。
「川島がロケハンの時の浦安の曇天を気に入り、照明を上げて絞りを深め、全編を人工の曇天にした」という特殊なこだわり。私はいま、『幕末太陽傳』の舞台となった「品川浦」の船着場に住んでいるが、曇り空の入り江を見ると、強烈ままでに『青べか物語』の映像がフラッシュバックする。摩訶不思議な重さ、暗さ、粗さを持った画と音で繰り広げられる、悲喜劇の数々。東京からやって来た作家先生と、あまりにも生々しすぎる地元民の対比。これぞ川島の真骨頂である。また主演・森繁の語りがイイ!
舞台となった浦安には2001年に「浦安市郷土博物館」が開館。あの映画の世界が、屋内外で再現されているという。山本周五郎の原作との比較から、いままで語られていなかった川島演出の妙味にも気づいた。いつか彼の地を訪れて、まとまった文章にしたいと考えている。

さて、『フィツカラルド』('82年・ドイツ)。昭和30年代の千葉・浦安から、18世紀末南米・ペルーの密林へ。文章を切り換えるのが大変だ(笑)。アマゾン川のはるか奥地イキトスで、オペラ・ハウスの建設を夢見る型破りな男の物語。
この作品を観たのは、一浪時代の1984年。ヴェルナー・ヘルツォーク監督作品というのは、私にとっては、もう、理屈ではないんだな。『アギーレ/神の怒り』('72年)にしても、『カスパー・ハウザーの謎』('74年)にしても、オープニングであのザラっとした空気を感じると、心から落ち着く。ぴったりと馴染む。「ここが私の居場所だ」とまで思えて来る(一部川島作品も同じ印象だ。1992年以前のムーンライダーズも同じ)。
十代最後の年にヘルツォークを知り、二浪を経た大学1年の時、日本ドイツ文化会館で特集上映に通った。近年の作品はなんとも不思議なテーマ選択になっているが、例えば'91年の『彼方へ』などでも、ヘルツォーク流の「アタマを左斜めうしろから撃ち抜かれる感覚」は感じとれるだろう。
リットー・ミュージックの雑誌『ピアノスタイル』に書いたが、私は三軒茶屋の名画座で、この作品が始まるなり、オープニングで泣きだしてしまった女性を見たことがある。「どうしたの? 大丈夫?」と、一緒に来ていた連れの女性が心配して尋ねる。「うん。これから始まる内容を思い出したら、感動して泣いてしまって…」。『フィツカラルド』とは、そんな作品である。それにしても、あの美しいエンディングたるや…。

『丹下左膳余話・百萬両の壺』('35年・日活)は、日本映画史のベスト5に入るだろうな。とんでもない思い出がある。2000年6月に東京・千石の三百人劇場で行われたニュープリント上映でのこと、フィルムの欠けと音声の不明瞭さが邪魔をしていた、こまかい演出の妙や洒落の効いたセリフがすべてわかり、客席は爆笑の連続。エンディングに向けて、場内は異常なほどの熱気を帯びつつあった。ここで私は、映画を観ながら危機感(?)を感じてしまったのだ。「この興奮状態、この熱気で”あの”ラストシーンを迎えたら、大変なことになるぞ!」と。
『百萬両の壺』を観るのはこのときが3、4回目で、物語はもちろん、画面までも良く覚えていた。ネタバレになるのでここには書けないが、すべてが決着し、本当のラストシーン。大河内傳次郎が退屈そうに弓矢を掴み、そして…。
私は映画館で、あれほどまでの歓声を聞いたことがない。満員の場内、全員が拍手。立ち上がって、スタンディング・オベーションをしている者までもいる。私ももちろん、力の限り拍手をした。何回も観ている作品なのに、新たな感動で涙が止まらなかった。1935年、昭和10年の、しかも92分にすぎない軽喜劇の小品である。それがこの感動と興奮。
監督・山中貞雄が、中国河南省開封市で戦病死したのは、この作品から3年後。わずか28歳での夭折であった。「日本映画界最高の監督は山中貞雄」という人も多い。確かにそうだろう。2000年の上映で、私も山中の天才を痛感した。

えーと、すいません。3位までで、丁度1回分の文章量かと。4位以降は、これから数回に分けてご紹介します。
長くなりそうだな、この話題(苦笑)。

≪今回のお楽しみリンク≫

◇『フィツカラルド』本国ドイツ版予告編。私も初めて観ました。
http://www.youtube.com/watch?v=F53yUsgVuL0

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