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2015年07月

第56回-1980年代の中の1960年代-その2・ザ・ベンチャーズ1980

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前回から書き始めた「1980年代の中の1960年代」。私が真っ先に思いつくのは1980年の盛夏にリリースされたザ・ベンチャーズのアルバム『カメレオン』だ。日本のみの企画盤だったためオフィシャルサイトには記述がなく、また日本国内のサイトでも非常に情報が少ないが、リアルタイムで聴いていた私からすると、「あれほど盛り上がっていたのになぜ?!」という気がする。まずは曲目を挙げておこう。

1. GOLD FINGER  作曲:J. BARRY
2. THEME FROM "NO SMOKING"  作曲:梅林茂(EX)
3. MUSHUKU  作曲:坂本龍一
4. SURFIN' U.S.S.R  作曲:鈴木慶一(ムーンライダーズ)
5. WHASHINGTON SQUARE  作曲:B. GOLDSTEIN
6. OCTPUS TREE  作曲:細野晴臣
7. スイミング・スクールの美人教師  作曲:高橋幸宏
8. MECCA  作曲:今井裕(イミテーション)
9. 素敵なフラミンゴ  作曲: 竹田和夫(クリエーション)
10. SALTY DOG  作曲:加藤和彦
11. GINZA SKA(ふたりの銀座)  作曲:D.WILSON et.al
12. PIKE  作曲:山下康(ヒカシュー)

勘の良い人ならばわかるだろう。前回書いたプラスチックスしかり、梅林茂のいたEXしかり、いやヒカシューのシングル「アルタネイティブ・サン」(この曲だけ加藤和彦プロデュース)にしても、高橋幸宏のソロアルバム『音楽殺人』(「スイミング・スクールの美人教師」のオリジナル収録)にしても、ベンチャーズのエレキ・サウンドの影響を少なからず受けており、「もういっそのこと、ご本家と一緒にアルバムを作ってしまおう」となったわけだ。本歌取りが一巡して、ご本家登場というか、なんというか。プロデューサーは加藤和彦。1980年代とはそういう時代だった(そしてこうした現象はこの前後にあちこちで発生していた)。

この中で特に注目されたのはM-12の「PIKE」だろう。この曲はほぼ同時に発売されたヒカシューのセカンド・アルバム『夏』に巻上公一のヴォーカル入りで収録された。そして1980年8月23日に公開されたカナダのホラー映画『チェンジリング』(主演・ジョージ・C・スコット)の"日本版テーマ曲"となる。さらにベンチャーズのこのアルバムにも収録…というわけだ。CMだのなんだので、ラジオから-いずれかのヴァージョンが-何回も流れていたように記憶する。

この夏、ベンチャーズはアルバムのプロモーションを兼ねて来日。ジャパンツアーを行うと共に、テレビ東京の音楽番組「ステレオ音楽館」にも一週間出演した。「ステレオ音楽館」はスタジオ・ライヴ型式の15分で月曜から金曜までの5回がひとテーマ、或いはひとアーティストとなっていた。当時(私は中学3年)はまだホームビデオなどは持っておらず、テレビの前でじっと観ていたが、サポート・キーボード奏者の近田春夫が「十番街の殺人」で嬉々としてオルガンを弾いていたのを良く覚えている。

なお、渋谷公会堂では「ヒカシューvsベンチャーズ」というジョイント・ライヴも開かれ、ゲストで加藤和彦も出演した(ちなみにこのアルバムは往年のベンチャーズ・ファンには評判が良くなかったのか、この年のツアーの集客はいまひとつだったらしい)。

このアルバムの音源はオトナの事情でYOUTUBEにはほとんど上がっていないのだが、「ヒカシューvsベンチャーズ」のライヴ音源が見つかった。曲は「PIKE」だが、リズムがかなり"テクノ風"。ギターで加藤和彦、後半では巻上公一も登場し、この夏の雰囲気と勢いを知るサウンドである。



…とまぁ、そこそこの盛り上がりをみせた1980年夏のベンチャーズなのだが、まぁ、いまやこのアルバム『カメレオン』のことも、「ステレオ音楽館」のことも、来日公演のことも、ほとんど語られない。

ちなみにこの『カメレオン』は1992年1月にEMIから、2000年6月にPヴァインからCDで再発されている。後者にはいま書いた「ヒカシューvsベンチャーズ」の3曲がボーナス・トラックとして追加されている。そして前者はほぼ5,000円、後者はほぼ10,000円のプレミアが付いている。

ううむ。音楽的なことを書かずに、史実面だけを書いてこんな分量になってしまった。しかも正しい情報を集めるのに何時間もかかってしまった。'80年代も遠くなりにけりだ。

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