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2020年03月

第87回-雑誌記事からこぼれたこと-その4・ふたりのベーシスト



月刊誌「JAZZ JAPAN」の新作映画レビューに書き切れなかった、しかし書き残したいエピソードの四回目。キリがないので今回で一旦シリーズ終了。

ここ2回ほど『レッキング・クルー 伝説のミュージシャンたち』(日本公開2016年2月)というドキュメンタリー映画について書いている。そして前回は楽器演奏のヘタクソな若いロック・バンドとロック界最高の職人集団レッキング・クルーの関係について書いた。そして最後に「しかし中には、若手ながらもレッキング・クルーとのコラボレーションで素晴らしいサウンドを生み出す強者も」と記した。それは誰か?

ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソン(b)である。ご多分に漏れずビーチ・ボーイズのレコードも、レッキング・クルーの演奏によるものだった。但し、彼らの場合、バーズやアソシエイションのように「ヘタクソで使い物にならなかった」というわけではなく、(熱心なファンには知られたことだが)「ともかくメンバー間の仲が悪く、その仲裁をするよりもセッション・ミュージシャンが代役を務めた方が早かった」という話もある(苦笑)。
もちろんそれだけではない。年間150本のライブをこなしじっくりレコーディングを行う余裕がなかった。ブライアンがレコードでは「完璧」な演奏を求めた、等々の理由もある。

しかし全員が参加していないというわけではなく、レコーディングの現場でアレンジとサウンド・メイクに深く関わったメンバーもいた。それがブライアンである。
60年代ロック・シングルの最高峰ともいわれる「グッド・ヴァイブレーション」もレッキング・クルーの演奏…だが、ここにふたりのベーシストが登場する。全編の演奏をしていたキャロル・ケイと、前半のフレージングを決めたブライアンだ。

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そしてこの関係が面白い。キャロルは「彼が作るベースラインは新鮮でかっこよかった」と「グッド・ヴァイブレーション」の前半部を弾く、そして「私が作るとこうなる」と続けて弾くのがその直後、サビの部分のジャズ風のウォーキング・ベースなのだ。なんと、あの曲のベースラインはふたりのフレージングを繋げたものだったのだ。キャロルは「彼が書いて来た譜面は完成されていて、手を加える必要はなかった」と語り、ブライアンも彼女を「時代を先取りした世界一のベーシスト」と絶賛している。同じパート同士の、リスペクトに満ちたミュージシャンシップがグッと来る。

まさにロックンロールの黄金時代。レッキング・クルーとその時代、その曲を追い続けることをライフ・ワークにしたいが、果たして、死ぬまでに聴ききれるのだろうか…。

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