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第27回-ブラジル映画祭その2・バイアォンに愛を込めて

LUIZ GONZAGA

ブラジル映画祭2012の東京会場の初日1本目『エリス・レジーナ ~ブラジル史上最高の歌手』に続いて、2本目『バイアォンに愛を込めて』('08)について。

もちろんエリスも楽しみだったが、期待で胸がハレツしそうだったのはこちらの『バイアォンに愛を込めて』の方だ。そう、これこそがここ数年、私が一番観たかった映画だ!

詩人にして国会議員でもあったウンベルト・テイシェイラ(Humberto Teixeira:1915~1979)の軌跡を、女優で娘のデニーゼ・デュモンが追いかけて、数十年間にわたるバイアォンの歴史を紐解いていく。
「詩人にして国会議員」とはどこかで聴いたことがあるような…「イパネマの娘」をはじめ、数々のボサノヴァの作詩、ミュージカル「黒いオルフェ」の作者として知られる「詩人にして外交官」のヴィニシウス・ヂ・モライス(Marcus Vinícius da Cruz e Mello Moraes:1913~1980)がリオに生まれ垢抜けた都会の生活を歌にしたのに対し、ノルデスチ(ブラジル東北部)出身のウンベルトは辛く酷しい地方の生活を、バイアォンと呼ばれるサウンドに乗せて見事な音楽にした。
そしてヴィニシウスにおけるトム・ジョビンにあたるウンベルトのパートナーが作曲、ヴォーカルとアコーディオンのルイス・ゴンザーガ、ヴィニシウスにおける「イパネマの娘」が、ウンベルトとゴンザーガの共作で第二の国歌とまでいわれる「白い翼(Asa Branca)」である。若干まわりくどい文章になったが、こう書けばボサノヴァ少女などにもウンベルトとゴンザーガのポジションを理解してもらえるだろうか。

なぜ「ここ数年、私が一番観たかった映画」なのか。ともかくこの5、6年、ノルデスチ、バイーア、バイアォンと「白い翼」が気になって気になってたまらないのだ。
ブラジル音楽へはボサノヴァよりもMPBから入った。デヴィッド・バーンが選曲した'60~'70年代のMPB集『BRAZIL CLASSICS 1 / BELEZA TROPICAL』('89)がきかっけで、もう25年近く前のことになる。カエターノを聴き、ナシメントを聴き、ジョルジュ・ベンを聴き、何組もライヴで観て、私は自分が「MPBファンだ」と思っていた。

しかし「白い翼」を聴き、その歌詞の意味を知り、「これこそが私が探していた音楽だ」とまで思うようになった。
「白い翼」は翼に希望を託した歌ではない。「最後に残った鳥さえも、貧しく過酷なこの土地を見捨てて飛び立って行ってしまった」と嘆く哀しみの歌である。そんな内容にあのメロディ…。「第二の国歌」と言われる理由がよくわかる。これは凄い歌だ。
もちろんこの曲だけではない。「Baião da Penha」も「Pagode Russo」も、明るさと哀しさを兼ね備えた、唯一無二のメロディーである(これらすべてを繋ぐワルター・ワンダレイの『ムーンドリームズ』('69)という名盤もあるが、それについてはまたの機会に)。

デヴィッド・バーンもいまやバイアォンに夢中のようだ。ゴンザーガ風の帽子をかぶり、NYのクラブで「白い翼」の英語カヴァーを歌うバーン。客席では奔放だったウンベルトのことをいまだに赦してはいない(はずの)離婚した妻(テイシェイラの母親)!…が本当に楽しそうに踊っていた。なんだ、旦那のことは嫌いでも、音楽としては認めているのか(笑)。

まったく書き切れない。107分にわたり、デヴィッド・バーンが、カエターノ・ヴェローゾが、ジルベルト・ジルが、シコ・ブアルキやガル・コスタ、レニーニまでもウンベルトとゴンザーガ、そしてバイアォンを語る。またエンディングが感動的で…(涙)。

私のバイアォンを巡る旅はまだ始まったばかりという感じだ。まずはこの映画で基礎知識をつけた。この次は…やっぱりノルデスチに行くしかないのか?
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