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第36回-こんな映画ばかりが気になる

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入江悠監督の『SR サイタマノラッパー』(2009)、富田克也監督の『サウダーヂ』(2011)、そして今年公開の中村義洋監督『みなさん、さようなら』。この3本の共通点が即座に、いくつも挙げられる人がいたら、かなりの映画通か、あるいは、社会現象通だろう。

いやこれに、山内マリコの傑作小説『ここは退屈迎えに来て』を加えても良い(映画化熱望!)。そう考えると、『下妻物語』もこのカテゴリーの嚆矢だったのか。いや、『木更津キャッツアイ』か、はたまた成瀬巳喜男の『乱れる』(1964)か?(『下妻』はファンタジーに、『木更津』はコメディに仕立て上げたが、背景はすべて同じだろう)。

ここに挙げた作品は、いずれも舞台が東京都心ではない。埼玉のしかも北側。深谷、本庄などほとんど群馬という場所。あるいは山梨県甲府市。マリコ女史の小説の舞台は出身地の富山なのだろうか。『みなさん、さようなら』は東京都下、ギリギリ練馬あたりかもしれないが、団地内の商店街にはシャッターが下り、住民は日本人よりも外国人労働者中心になり、なかなかの荒廃ぶりであった。

特にインパクトがあったのが夫婦で観た『サウダーヂ』で、その後しばらく、飲みに行く度にあの映画と、地方都市の話をしていた。167分の大作だったが長くは感じなかった。「もっと観たい」と思ったほどだ。

父親の仕事の関係で東北各地と千葉を転々とし、関東某県の大学に進んだ妻と、東京生まれではあるが小学校から大学まで実家が三浦半島にあり、就職後は工場配属のために内房の埋立地で数年を過ごした私(一時、静岡の清水にもいた)。『サウダーヂ』的な世界についてならばいくらでも、それこそ夜を徹してでも語ることがある。いまでこそ東京都心のマンションに住んでいるが、ふたりともむしろその”外郭”の方が詳しいのだ。

すべての作品を通じての感想はただひと言。「なんでこんなことになってしまったんだろう」だ。『サウダーヂ』に登場する繁華街も、何年か前までは賑やかだったのかもしれない。それがなぜかああなった。その理由は明確には描かれないが、それを物語から推測するのがあの映画の見方でもある。
『みなさん、さようなら』は郊外の団地における18年間の変化を見事に描ききった。『サイタマノラッパー』は群馬を舞台にした2作目の『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』が辛辣だった。

映画や小説だけの話ではないのだ。土地バブル崩壊、ITバブルも崩壊、失われた10年が20年になり、リーマンショックに東日本大震災、挙げ句の果ては茶番としかいえない民主党政権、その次は棒読み総理のアベノミクスだ。この間の地方の疲弊、経済破綻、商業の消滅がどれほどのものだったか、想像も付かない。

「**年続いた**も、今年を持って終焉」-映画館、飲食店、商店、ホテルや旅館、文化施設、あるいは何かの団体や組織。調べ上げれば数百、数千に及ぶだろう。そしてその跡地はコインパーキングかパチンコ店、サラ金、あるいは怪しげな勧誘商法の集会所になる(『サウダーヂ』など、お見事なことに「日輪水」なるスピリチュアル商品まで盛り込んでいた)。

見慣れた町、生まれ育った町が駄目になってゆく絶望感を、皆、口に出さずに感じている。コンビニすら潰れる末期的な景気にウンザリしている。それを映像や活字で綴ったのが、冒頭の映画と小説なのだろう。これからも、このような作品は次々に現れると思う。そして幸か不幸か、こんな辛辣な作品こそ、いま、我々が映像や活字で実感したい、再確認したい内容という気もする。

駄目になって行く日本でこそ、描ける世界もある。ギリギリの芸術かもしれないが…。

(そんな中での『あまちゃん』の出現。さてこれはどうまとめればよいか…検討中!)
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