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第60回-映画評の正確さと誘惑

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今年の4月頃、アカデミー賞で話題となった『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』と『セッション』という2本の映画をめぐって、日本のネットで色々な論争が起こった。『バードマン』超絶賛派&『セッション』糾弾派、『セッション』絶賛派、二作比較評論派などなど。ミュージシャンや音楽評論家、映画評論家が参戦(?)して熱い論争が繰り広げられたが、本稿はその対立が主題ではない。

『バードマン』のカメラワークと演出を讃える映画評論家の文章のなかに「全編ワンカットにした意図が…」、「映画は終始、主人公の視点で」と書いたものがあり、私もこれには「え?」と思った。音楽評論家である高橋健太郎氏がすぐに「全編ワンカットではない」、「主人公の視点だけで描かれた映画でもない」と指摘していた。
ご覧になった方ならばわかると思うが、主人公の周囲を離れたサイドストーリーも数カ所あり、脇役同士の屋上のシーン、楽屋のシーンなど、主人公不在のパートも存在し、当然この前後ではカットは途切れる。

しかしなぜ評論家氏は「全編ワンカット」、「主人公の視点」と書いたか。私も同業なのでなんとなく気持ちは判るのだが、その比率が90%、95%くらいになると、「全編」と書いてしまった方が文章的に面白く、凝った映画のように伝えられるのだな。乱暴に言えば、書き手にとってはこれは一種の誘惑だ。
だがこれは正確さを欠いた文章で、私もつい書きそうになって、「いや、まてよ」とシナリオを調べ直したり、ビデオを見直したりして確認することがある。そして殆どのケースで「美しき思い込み」であったことがわかり文章を改めている。この『バードマン』についてではなく、その他数々の作品についてである。

例えば川島雄三監督の傑作『しとやかな獣』(62年・大映)。この作品について「キャメラは公団住宅の一室を一歩も出ることはなく」と書いた文章を見かけるが、それは間違っている。例えば小沢昭一と高松英郎が車で乗り付けたシーン(ベランダから公園を俯瞰)、その二人が階段を登ってくるシーン(廊下から)、船越英二が屋上に佇むシーン(空中、上空からの視座)、ラストのにわか雨の晴海団地の遠景など、何回も部屋を出ている。しかもこれ以外の90%以上が「一室を一歩も出ることはなく」なので、この例外的なカットが非常に新鮮に、効果的に飛び込んで来る。これはこれで立派な演出なのだ。
しかし、このわずかな数カットのために「一歩も出ることはなく」という"オイシイ"修辞を封印してしまうのは勿体ないので、つい筆が滑って、というかチカラ余って…となってしまうんだな。しかししかし、繰り返しになるが、キャメラワークや編集、シナリオを考える時に、この不正確さは命取りになる。

まぁ、これ以外にも、登場人物についてとか、演出について、音楽について、様々な思い込みというか、願望というかで書かれた事実と(微妙に)異なる文章は星の数ほどあるなー。
私は光工学・電線製造技術コンサルタントとの兼業で、技術文書や論文を思い込みや願望で書くことは許されず(書いてしまった女性研究者もいたが)、そこでついた習慣からで正確を期するようにしているが…。
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